「江戸川区情報公開条例改正案」に対し、生活者ネットワークは反対討論を行いました

第三回区議会定例会最終日にあたり、生活者ネットワークは、本西みつえが「江戸川区情報公開条例の一部を改正する条例」に対し、反対討論を行いました。

結果は、31対12 で原案どおり可決となりました。反対は、生活者ネットワーク(2名)・共産党(5名)・江戸川クラブ(4名)・民進党(5名のうち1名)でした。 

生活者ネットワークはこれからも情報公開制度をチェックするとともに、まちづくりへの市民参加をすすめてまいります。

以下、討論全文をお伝えします。

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私は「生活者ネットワーク」を代表し、第62号議案に反対の立場で討論を行います。 

国や地方自治体は、主権者である住民に対し幅広く情報を提供して行政運営の内容を説明する責任を負っています。情報公開制度の必要性は論を待ちませんが、特に、地方自治体においては住民自治の観点も重視されなければなりません。 

住民自治は地方自治の本旨のひとつであり、地方自治はその地方の住民の意思と責任に基づいて処理されることが原則です。さらに、江戸川区が掲げる「区民との協働」を一層推進するには、住民が自らの意思に基づき、適正に行政運営に参画することが極めて重要であり、そのためには、住民が行政のさまざまな情報を把握する手段が保障されていなければなりません。 

私たち生活者ネットワークは、この理念を実効あるものとするため、市民参加と情報公開は一対のものとしてすすめるべきと申し上げ、さまざまな観点から情報公開制度の適切な運用を求めてきたところです。 

同じ区の行政文書でありながら、所管課によって対応が異なることへの改善を求めたり、行政文書の保管および公開のあり方についても意見を述べてまいりました。本年第一回定例会(P81)では、多くの自治体が設置する中、江戸川区には置かれていない「情報公開及び個人情報保護審議会」の設置を求めたところです。 (*23区では20区が審議会を設置)

この審議会は、情報公開や個人情報保護制度の適切な運用を図るために、公開のうえ、住民を含む多様なメンバーが参画して諮問事項を協議する会議体ですが、江戸川区では、本来、情報開示請求者からの不服申し立てを審査するために有識者のみで構成する「情報公開及び個人情報保護審査会」がこの任にもあたるという、異例の状況が続いています。 

江戸川区の情報公開制度が決してすすんでいるとは言えず、さらに開かれた区政運営が求められる中、江戸川区は今回新たに「情報公開条例」に、市民の権利の濫用に対抗する手段として、権利の濫用、開示請求の拒否、開示文書保管期間の設定、被覆処理文書の閲覧有料化という4つの規定を盛りこもうとしています。 

その主な理由は、請求者が本来の趣旨を逸脱するような開示請求を行い、その対応にあたって職員が疲弊しているから、とのことですが、そういう状況におかれた職員への対応、また、本制度に係る組織的な職員体制、そして、権利を濫用していると思われる請求者への個別対応のあり方などはどうだったのか、そもそも区の情報公開制度が開示を求める側にとっても、求められる側にとっても、適切に運用されてきたのかどうか、十分検証することも必要です。 

今回、「審査会」での審議の結果は、諮問内容の必要性を認める一方、行政文書及び自己情報の開示の運用に当たっては、実施機関に対し、行政文書の開示を請求する権利の濫用に係る指針に沿って運用することを義務付ける等、安易に権利の濫用を適用して開示請求を拒否することがないよう、適正な運用を徹底するための万全の対策を講じるよう要請する旨の答申を出しています。

しかし指針 (P27)には、権利の濫用の適用の判断に際しては、実施機関は事前に総務課長と協議する、となっています。指針に明確な基準は示されておらず、これでは判断の公平性が担保されず、当局の都合で「権利の濫用」を判断し、請求の拒否ができることになりかねません。これまで以上に情報開示請求者とのトラブルが多発する可能性も否定できません。 

何より問題なのは、このような重大な条例改正を行うにあたり、主権者である区民の参加がまったくなされてこなかったということです。先に申し上げた区民参加の協議がなされないばかりか、パブリックコメントの募集さえ行われませんでした。江戸川区議会に対しても、全員協議会を開くなどし、事前に区の考えを伝えるべきだったと考えます。

今回の政策形成及び条例改正のプロセスは不十分であったと言わざるを得ません。 

ここで、大飯原発運転差止請求事件について、福井地方裁判所が下した判決要旨の一部を読みたいと思います。 

「被告は本件原発の稼動が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことであると考えている。」 

ここから読み取るべきは、民主主義を進めていくには、国民・区民の知る権利と、行政側の手間やコストを天秤にかける議論はすべきではないということです。 

今回の条例改正の過程において、地方自治の本旨である住民自治をないがしろにし、区民参加が保障されず、結果、憲法で保障された知る権利が制限されかねない状況を生んでいることから、第62号議案に反対いたします。

より良い情報公開制度は、区民とともにすすめる江戸川区であるべきです。 

議員各位には多くのご賛同をいただきますようお願い申しあげ、生活者ネットワークの討論を終わります。