特定秘密の指定・解除・適正評価の実施基準案に関し、パブリックコメントを提出しました

 江戸川・生活者ネットワークは、7月24日から募集されていました「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を 図るための基準(仮称)(案)」に対する意見を下記のとおり、内閣官房特定秘密保護法施行準備室 に提出しました。全文をご紹介します。

  昨年12月、強行採決された特定秘密保護法に対して、江戸川・生活者ネットワークは国民の知る権利を侵害するもの、報道の自由を妨げる点において、憲法21条、自由権規約19条に違反する法律であることから反対・廃止を表明しています。

 724日、「特定秘密保護法」の「施行令」「統一的運用基準」の素案が示されましたが、特定秘密保護法をそのままにして、施行令や運用基準で監視機関・内部通報制度をつくっても、有効に機能するのか疑問です。しかし、依然あいまいで不十分である素案の内容を見るにつけ、国民の知る権利を取り戻すためにも、素案に対して問題点を指摘していかなければならないと考えます。

 そもそも国の持っている情報は国民のものであり、たとえ特定秘密に指定されたとしても、最後には国民に公開されるべきという認識を政府は持つべきです。当然、「特定秘密の範囲はどこまでなのか」「秘密指定期間の長期化や解除はどうなるのか」「秘密裏に廃棄されるのではないか」「時の政府によっては特定秘密の開示ができなくなるのではないか」「報道の自由が確保されるのか」など、運用監視のしくみが国民にとって明らかでなければなりません。そこで、以下の点について指摘します。

 今回の基準で示されたのは大きく「1.秘密の判断基準」「2.チェックシステム」「3.取材報道の自由の確保」の3つです。1では政令、省令が明確になっていない、管理ができない、透明性が確保できていない、マネジメントが複雑なこと、解除のしくみができていない、2では内閣保全監視委員会の持つ機能そのものが秘密保全ではないか、独立機関、第3者機関の設置でなければならない、3では、報道・取材では上司に報告義務があり、取材の許可制や罰則の強化が報道・取材の自由の妨げになる、などの問題があります。特に以下の点から、この法律の施行は国民の知る権利や報道の自由に大きな影響があることが明白です。

・特定秘密の指定解除の基準が明確に書かれていない。長期にわたって指定されたものについては解除のしくみがない

・特定秘密の指定期間と文書の保存期間が同じではないことが問題である。行政機関において文書の保存期間満了は業務上必要がなくなったことを意味するため、秘密指定のまま歴史文書として管理するしくみがないということは文書の廃棄になることが疑われる

・特定秘密の指定の中で特段の秘匿の必要性については「その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるもの」(法31項)とあるが、もっとも裁量的判断の範囲が広く、主観的な判断が起こりやすいところである。「著しい支障」「おそれ」「特に秘匿することは必要」といった部分の解釈基準が明確でない

・特定秘密指定の禁止事項については何のために禁止するのかという考えがない基準づくりになっている。アメリカのように秘密指定に指定することで特定の個人や組織が不当な利益を獲得することを防止するといった考えのもとに基準がつくられるべき

・秘密指定期間の延長については内閣の了承、すなわち閣議で行われることになっているが、閣議の議事録作成や情報公開の問題があり、非公開になったものの消滅を意味するのではないか

・内閣保全監視委員会については事務局が「内閣情報調査室」であることから、監視機関として適正といえるのか。監視機関は別に持つべきではないか。また、監視機関にあるべき機能である25年超の機密指定の承認、内部通報が認められなかった場合の不服申し立ての審査、機密指定解除審査が認められなかった場合の不服申し立ての審査がない

・知る権利と安全保障に関する国際基準であるツワネ原則は、すべての情報に対するアクセスを認められた独立第三者機関が必要であるとしている。独立公文書管理監はこのような機関に該当しないことからツワネ原則違反(統一運用基準V3、内閣府令)である。

 以上、示された法律施行令および運用基準において、国民の知る権利の保障や報道の自由が保障されるとは言い難く、2014726日には自由権規約委員会より日本政府に対して、秘密指定の対象となる情報について曖昧かつ広汎に規定されている点、指定について抽象的要件しか規定されていない点、ジャーナリストや人権活動家の活動に対し萎縮効果をもたらしかねない重い刑罰が規定されている点について憂慮する(自由権規約19条)旨勧告し、特定秘密保護法を抜本的に見直すよう求めており、また、20119月、法の番人である内閣法制局から「特定秘密保護法の必要性が弱い」との指摘があったことからも、特定秘密保護法については、法律に遡り今一度国会での十分な審議と見直しを強く求めるものです。