八ツ場ダムの今を視察してきました
11月15日(日)、本西みつえ・伊藤ひとみとともに江戸川ネットのメンバー総勢5名で群馬県「八ツ場ダム予定地見学会」に参加しました。
「八ツ場あしたの会」(*)の皆さんの案内と、同会の事務局長・渡辺さんの説明を聞きながら、八ツ場大橋~水没予定地~代替地~晩秋の吾妻渓谷~展望台~八ツ場ダム本体工事の現場を徒歩とマイクロバスで見学しました。
八ツ場大橋から見下ろした旧川原湯温泉駅の跡地を眺め、数年前に訪れた時には、今、自分が立っている八ツ場大橋は未完成で、駅前から見上げた時の圧倒される橋脚の高さ、水没の位置を示す青い線と水位調節のオレンジ色の線、この場所がすべて水底に沈むのかと唖然としたことを思い出します。吾妻渓谷は前日から降り続いた雨で、当初予定していた遊歩道が危険なため旧国道を歩きました。
生活者ネットワークは「八ツ場ダムに反対」の立場で活動をしてきました。政権交代で、一度は廃止が決まり建設が止まりかけましたが、残念ながら今は急ピッチで工事が進められています。
しかし、ダムの予定地は地質がもろく地すべりが起きやすい場所です。さらに住民が移転した代替地の盛り土などに使われた、有害物質を含む「鉄鋼スラグ」により新たな環境問題も起きています。国交省は、このような問題について住民に対しきちんとした説明や対応をしていません。また、残念なことに司法の場では最高裁が、生活者ネットも含めた1都5県の住民による「八ツ場ダム住民訴訟」の上告を全て棄却しました。
山間の美しい自然も、地域コミュニティーも壊し様々な問題を抱えたままダムの本体工事が始まってしまいました。東京都も負担金を拠出する八ツ場ダムを今後も注視してゆく必要があるでしょう。
今回の見学会で散策した吾妻渓谷の上流側は、ダムができれば水没する場所です。計画はあったものの工事も始まらず美しかった従前の景色と比べ、ダム工事のためにコンクリートでせき止められた流れや、削られ剥き出しになった山肌が、痛々しく心に残りました。
八ツ場ダム中止を争点のひとつに政権交代したものの、それをかなえることなく下野した政党への視線は依然厳しいものがありますが、当時掲げた「コンクリートから人へ」の理念・実践は今後も継続されなければなりません。
運営委員 水澤 貞子
※八ツ場あしたの会・・八ツ場ダムの中止と水没予定地の再生を目的とするNGO団体