放射能のひみつ

20日行なわれた、区が主催の研修会について報告します。

江戸川区が、これからの施策決定に向けて、放射線についてきちんと学ぼうと企画した、20日の健康課題研修会に参加。講師は東京大学医学部附属病院放射線科准教授 中川恵一先生。
以下、講演内容メモの抜粋を取り急ぎお伝えします。

今、わかっていることは、体内に累積した放射線が100mSv(ミリシーベルト)になると「発がん」率が増加することだけである。「がん」全体のなかで考える必要がある。もともと日本は2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなるという、世界でもっともがんによる死亡が多い国である。
日本の自然放射線量は年間約1.5mSvで、世界の平均2.4mSvからみても少ない。土は「−イオン」、セシウムは「+イオン」なので結びつきやすく、土の表面に吸着すると流れない。福島原発の事故によって3月11日から16日にかけて排出された放射性物質が雨に溶けて土に浸み込んでγ(ガンマ)線が出ているのが今の放射線の状況。
人体に与える影響の単位がシーベルト(Sv)、物質がどれだけ放射線を出すかの単位がベクレル(Bq)で、一般に放射線による障がいが出てくるのは年間1mSvといわれているが、これは自然放射線量(日本人は年平均1.5mSv、内部被ばくを含む)や医療による被ばく(日本人平均2.3mSv、日本は世界一、アメリカではこの半分)合わせて3.8mSvがすでにベースにあっての数値。発がんのリスクが高くなる数値は、年間5mSであることから、平時には年間1mSvという数値が出てくることになる。
放射線は、DNAの仕組みを切断するすることで、生命に影響を与えるが、もともと自然界に放射線があったので、人間にはこれを修復する能力がある。ただし、一瞬で大量に被ばくすると修復は不可能。広島・長崎のデータから年100〜150mSv以上の被ばくで発がん性が増加するというデータがあるが、100mSv以下ではその証拠がないのでわからない。どのレベルだと危険という基準を科学的に示すことはできない。ICRP(国際放射線防護委員会)では低線量の放射線についてはよくわかっていないが、影響があると考えておくほうが被ばくが想定されるときに「より安全」だという考え方に基づいて平時の基準を1mSvとしている。
18日(土)区内4ヵ所(東京都HPに詳細あり)に計測された放射線量では、小岩小学校の地上5cmのところが、0.15μSv(マイクロシーベルト)だったが、この数値は、24時間365日その場にいたらという設定で、0.15μSV×24時間×365日=1.3mSv/年になる。これは自然界の放射線量も含んだ数値で内部被ばくを考えても、医療被ばくを除けば年2mSvにはならないので、大丈夫だと考えられる。
日本は世界一の「がん大国」、唯一の「被爆国」であるにもかかわらず、がん教育、放射線教育がほとんどないことが問題。また、がん検診への啓発も必要。

講演後、多田区長自ら質問。「区民に不安の声があり、区で測定してほしいという要望も聞こえている。不安が不安のままであってはいけないと思っている。4ヵ所江戸川区で測定したその評価を聞かせてほしい。」に対しての答えは「年1.3mSvという数字は平時の日本人の平均値1.5mSvに許容できる1mSvを加えて2.5mSvなので、1.3に内部被ばく、おそらくは平均1.5のうちの半分以上として0.8を加えても2.5にはならないので大丈夫と思うが、今の状況では、大丈夫ですよとはいえない。説明に慎重を要する時期に入ったと思う。」
保健所長からも「1.3mSvという数値は、24時間外にいた場合で、通常は屋外8時間、屋内16時間で換算するので、もっと値は小さくなるのでは。また、内部被ばく0.8の科学的根拠は?」との問いには、その通りで、0.8も仮の数値と説明してから「基準値は最終的に、目安として複数あっていいと思う。江戸川区と福島とで違っていい。今は、状況によって変えていかざるを得ない。基準値を設けて、それ以上は黒、それ以下は白とはっきりさせることはできない。最終的に平時の年1mSvを目標にしていくことが必要だ。」という発言があった。                           
(新村いく子)

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