5月28日、「第2回 八ツ場ダム学習会 in 江戸川」が開催されました。利根川水系の下流部で、河川に親しみ河川の問題に取り組んでいるさまざまな市民グループが、共催という形でこの学習会を企画できたことは、大変意義のあることでした。
「八ツ場ダムをストップさせる東京の会」のこれまでの活動や今後の取り組みを代表の深澤洋子さんに詳しく聞くことができ、また、八ツ場ダムの問題点を嶋津輝之さん(水源開発問題全国連絡会共同代表)に講演していただきました。
国土交通省が群馬県長野原町で建設しようとしている八ツ場ダムは、1952年に構想が浮上し、地元では反対運動を余儀なくされてきました。しかし、運動の長期化により疲弊し世代の交代もあって反対同盟が解散し、基本計画を受け入れた現在は個別の補償交渉に入っています。しかし、水没住民の代替地の造成は遅れ、道路や鉄道の付け替え工事などの関連工事は進行しているにもかかわらず、用地買収も終了せず本体工事も始まっていません。昨年11月、国は事業費を倍増して4600億円に改定。関連都県は、ろくな調査もせず議会に諮り、自民、公明などの賛成によって可決されました。この額は、本体事業費であり、関連工事や起債利息を含めると8800億円にもなるダム建設なのです。すでに一部は私たちの水道料金に加算されており、その後も税金という形でこの大きなお金はわたしたちの負担になっていきます。
八ツ場ダム計画の目的は、「吾妻川と利根川の洪水調整」と「都市用水の開発」ですが、首都圏の水道用水は減少の一途であり、渇水対策としてもダムがあまり役に立たないことは明らかになっています。新たなダムを建設するよりも、保水力の大きい広葉樹林を中心とした森林の整備を図ることのほうがはるかに重要なのです。洪水についてもカスリーン台風(1947年)の洪水をベースに設定されていますが、戦争直後の食料難解消やエネルギー源確保のために森林伐採がひどかったことが被害を大きくした原因であり、当時と比べ植林や森林の成長で山の保水力は大幅に高くなっている現在、同等の雨が降っても洪水流量はもっと小さい値になるそうです。その上、吾妻渓谷自体が自然の洪水調整の機能を持っていて、むしろダムをつくった後に放流の操作を誤れば、洪水を助長することにもなりかねません。何より、驚いたのは、ダムサイトの位置が1973年に600m上流に変更されていますが、その地点について当時の建設省や文化庁が、断層や割れ目が非常に多く、また温泉による熱で変質して脆弱化していることを理由にダムの基礎地盤として危険だと答弁していた事実です。ダムの基盤が崩壊すれば、すさまじい被害が引き起こされるのではないでしょうか。
ダム予定地の人々を長年苦しめ、なんら恩恵ももたらせない八ツ場ダム計画、未来に大きな負の遺産を残すであろう八ツ場ダム計画です。
現在、ダムのもたらす災いが次々と明るみになり、世界は確実に脱ダムの時代になっています。首都圏最後のこの巨大ダム計画を多くの市民力でストップさせましょう。
(藤居阿紀子)